ライブハウスでのライブとは?ホールでのライブとは?そもそもどこがどう違うのか?
ライターの石井恵梨子さんを交えて増子・上原子が語ります!

★『音楽と人』2012年1月号に、石井さんによる11月7日@東京 NHKホールのライブレポートが掲載。そちらも必見です!★


――この前のNHKホール、よかったです。大所帯だからまぁ楽しくなるだろうと思ってはいたけど、楽しさだけじゃなく、音楽的にすごく充実してたのが印象的で。
上原子「ありがとうございます!」
増子「でも、まだ二回目だったからね。毎回ちょっとずつ全員が意見出しあって、最終的にカタチになったの、最終日だった」
上原子「こっからだ! っていう時に(笑)」
――残念。ただ、数日前に友達のバンドマンと話してて。「最近いいライヴあった?」「怒髪よかったよ」って言ってたら「ああいうホールで見ていいのぉ?」。
増子&上原子「はははは」
――おそらく同じ意見のファンも少なくないと思うんですよ。ホールで怒髪天ってどうなのか、と。
増子「や、いっぱいいると思う。だって俺らだって思うもんね?」
上原子「うん」
——はははは。思うんだ。じゃあ、もしかしたら来ないファンもいるかもしれないと覚悟しながら、それでも今回のホールツアーに踏み切った理由から聞いていきましょうか。
増子「まぁやりたかったんだよ。ずーっとね」
――ミもフタもない(笑)。
上原子「でも夢だったよね、こういう編成でやるのが。昔の歌謡とかR&Bとかもこういう編成が多いし、自分たちの曲もそこから影響受けてるから。絶対こういう編成でやってみたい、っていうか、自分がまず聴きたいっていう」
増子「ブルース・ブラザーズだったり、言うたら究極はRCでしょ。俺らの曲、そういうイメージで作ったものも何曲もあるから。ただ、ホールって経費もかかるし、バンドのスキルも必要だし、あとはタイミング。単純にスタジオ・ミュージシャン呼んでもつまんないから、自分たちの好きな人たちとやりたい。それぞれが既にカッコいいバンドやってなきゃ嫌なんだよね」
上原子「特にコーラスなんてね、それぞれフロント張ってる人ばっかりだから。なんで後ろに行かされちゃってんだみたいな(笑)。すごい贅沢な話で」
増子「そしてヴォーカルのスキルは俺より全員上だからね! ほんとに(笑)」
――きっかけは去年の秋の『Neo-JAPANESE STANDARD』3デイズですよね。九段会館でキーボードと絡んで、キネマ倶楽部ではホーン隊とは絡んでるから、あれが布石になったことは間違いなくて。
上原子「うん。そのまえの京都の磔磔でね、(カトウ)タロウと、クジさんと一緒にやって。そこでもう、キーボードとホーンとギターを入れる実験はしてて。それで味をしめちゃったっていうのはある。この編成でツアーしたいね、ってその時から言ってたし」
——そのうえで、今回の大きなポイントが女性コーラスの参加。よくこの3人を呼んだな、っていうメンツでしたね。っていうか皆よく喜んでOKしたなと。
上原子「ほんとに。みんな普段やってるバンドとはキャラが違うっていう。でもウチらもね、増子ちゃんの声と女性コーラスって、最初どんなふうに合わせていいのかイメージできなくて。でもやってみたら新鮮だった。アレンジは原曲を再現する以上に(うつみ)ようこさんがリーダーとなってアイディアをくれて。『ここに入れたい、こういうの入れたい』って言ってくれたし」
増子「そういうの多かったね。他のメンバーも打ち上げで毎回のように『あそこをこうしたい』『ここにこれ入れていいか』って、向こうからガンガン来るんだよね。もうメンバーと同じように意見してくれる」
――じゃあ私が見た東京より、後半のほうがサウンドも豪華だったんだ。
増子「より精度は上がってた。たぶんね、4回目の札幌でちょっと掴めた。で、次の名古屋で“なるほどこういうことか!”って全体の形を把握できた。そして福岡で少し遊べるようになってきた。これならイケるぞ、って思ったらファイナル(笑)。だから……もっとやりたかったなぁ、ほんと」
――それ、最初の大阪見た人はどうなのよ、みたいな話ですけど(笑)。
上原子「大阪はね、初日だからみんな緊張感があって。ステージから見える景色も、最初は緞帳閉まってるから、スタートしてみないとわかんないし。それまでは狭いスタジオでしかリハやってなかったから」
増子「本番でわかること多かったね。リハでは何回も通してやったけど、本番は全然違う。終わったあとユキちゃん(鈴木由紀子)も言ってたけど、本番で俺のMCが入ってくると全然違うんだって。そのバンドのタイム感? 各バンドの“訛り”ってよく言うんだけど、坂さんが入ってくるタイム感とか、他の人にはわかんないの。みんなびっくりしちゃって。『え…ええっ?』っていう瞬間何回もあったもん」
上原子「それが5回目ぐらいになるとみんな合ってくる。お互いに理解して歩み寄ってきて。すごくバンドらしい感覚だったよね」
――じゃあ、セットリストの中から印象的だった曲をいくつか挙げていきましょうか。最初……まさか坂さんから始まるとは思わなかった(笑)。
増子「あれね、今回この特設サイトでセットリスト公開してて、マネージャーの解説も出てるけど。なぜか坂さんのソロんとこに『失笑』って書いてある」
――ははは。普通に叩いてるだけなのに。
増子「でもまさに失笑なんだよね。まぁ坂さん的には真剣にやってんだけど、なんであんなに面白くなっちゃうのか」
上原子「毎回必ずキマって始まらないっていう」
――でもこんなオープニングは怒髪天史上初だった。そして『D&Jのテーマ』。今回の主題歌みたいで豪華でしたね。見た目にも音にも華があって。
上原子「今回の編成でやるにあたってね、テーマ曲っていうのを絶対作りたくて。もう完全ブルース・ブラザースのイメージ」
――ただ、キーボードやホーンが入ると、賑やかしの派手なアレンジというか、華やかな音になるのは当たり前ですよね。でも今回は、なるほどシブいな、っていうホーンのアレンジが印象的だった。
上原子「そうそう。別にウチらからフレーズ指定したわけじゃないし。勝手(にしやがれ)チームが考えてくれるんだけど、やっぱ出てくるフレーズが大人っぽいんだよなぁ。俺らが考えると、もうちょっとコミカルな感じになっちゃう(笑)」
増子「もともとコミカルなもんにコミカルなもん足されると、もう歯止めが効かなくなっちゃうから(笑)」
――そのホーン隊がはけて、4曲目以降は意外な選曲が並びましたね。『ラブソングを唄わない男』とか『大人になっちまえば』とか、ほんと久しぶりに聴いた気がする。
増子「うん。普通だともっとノリのいい、アゲてく感じのセットリストになると思うんだけど」
——普段のライヴハウスって実は二極なんですよね。がんがんアゲていくか、じっくり聴かせるか。その中間っていうのが実はあんまり聴けない。
上原子「そう。だからこのあたりは今回の編成ならではで、こういうアレンジにしたら曲がもっと広がるよねっていう見せどころ。『大人になっちまえば』でアコーディオン入れてもらったり。『3番線』なんてあんまライヴハウスでやらない……ほとんどやってないよね。音源にはわりと音数入ってるから、4人だけでやるとニュアンス違ってきちゃう。今回はそういう曲も再現できる編成だから」
――そのあと、特にグッときたのが『サムライブルー』でした。
増子「最初に曲を選ぶときに、俺らがこれをやりたい、あれをやりたい、って何曲か出して。それ以外にマネージャーからリクエストされた曲。“え、ここ触っちゃう?”っていう」
——あぁ、確かに。10年以上前からずっとある名曲だし、この曲に強い思い入れのある人も多いし。そのぶん、ヘタに何かを加えちゃダメと思えるような。
増子「そう。俺らもこの曲は4人だけでやるのが完璧だと思ってたし、そのソリッドさゆえにこの曲の良さがあると思ってた。たぶんお客さんもそう思ってると思う。でも、そこをあえてチャレンジするのが面白くて。実際、俺らが発見すること多かったよね」
上原子「うん。そもそもウチら4人だけで選曲考えてたら、もし『サムライブルー』やったしても、こんな早い段階に入ってこなかったよね。もっと後ろのほうでやりたい“落とし”の曲、みたいな感じになるし」
増子「これね、すごく大事なことなんだけど。今回に限らず、俺らだけで考えるとセットリストに偏りが出てきちゃう。盛り上がる曲やっちゃいがちなの。なぜならやってて楽しいから(笑)」
——わははは。そりゃそうだ。
上原子「あと、ウチらだけだと、どうしても昔の曲よりは最近のをやりたくなるし。でもね、第三者が見てくれるとまた違った新鮮味があって」
増子「そこも一緒に話し合って決めてるから。で、今回の『サムライブルー』はね、もし俺らがウルフルズぐらいのヒットの仕方をしたとして、それが『サムライブルー』だったとして、紅白出ますよとなった時、きっとこういうアレンジになってNHKホールでやるんだろう、っていうアレンジだよね」
上原子「まぁ俺らがイメージしてる紅白って、決して近年ではないんだけど(笑)」
——いまやAKBやKARAが出るの出ないのって言ってる時代です(笑)。
増子「紅白のイメージが昭和のまま止まってる(笑)。でも、ああいうアレンジ新鮮だったなぁ。こういう捉え方もあるんだ、って」
――『サンセットマン』も大胆にアレンジ変えてましたね。ピアノと歌だけでこんな聴かせ方するのか!っていう驚きが。
上原子「冒頭のところね。本来は歌とギターなんだけど、奥野くんは変な先入観なしで『これには絶対エレピが合う』って言ってくれて。増子ちゃんの声にエレピって発想がね、もともと怒髪天にはない感じだよね。でもやってみたらけっこう合うんだよね。エレピのスイートな感じとあのヴォーカルが」
――イメージとしては、ベストテンみたいな歌番組で歌手の後ろにピアノだけがあって、床にもくもくスモークが炊かれている感じ……これも昭和の話ですけど。
上原子「そうそうそう! まさにそんな感じ(笑)」
増子「ちょっと『赤いスイトピー』的な音色だよね(笑)。ああいう感じ、やっぱ昭和歌謡っていいんだよねぇ」
――ただ、それって言い方を変えればロックバンドを必要としない、ロックバンドがやらなくてもいいアレンジであって。
増子「うん。でも俺らはロックバンドって括りではできないことをやりたかったから。ゆえのホールなんだよね。で、やってみて楽しかったのはもちろんだけど、すごい勉強になった。俺らが作った曲を第三者が解釈するとどうなるか、俺ら4人の曲は外側から見たらどんなふうに見えるのか、とか。さっきのバンドの“訛り”の話でいえば、ウチら独特のタイム感ってすごいよね? このバンドのリズムを引っ張ってるのはベースだった、ってこともわかった」
――ん?
増子「坂さんは友康を見て叩いてる、ってこともわかった」
上原子「今までベースほとんど聴いてなかった」
――わははははははは。
増子「それは他の奴が発見したんだけど。やっぱギターとヴォーカルって走りがちなんだよ。坂さんは、そこに合わせて一緒に盛り上がっちゃって速くなんの」
——それ、今までずーっと気づかなかったんですか?
増子「不思議なことに、4人だけだと気づかないんだよね(笑)。まさに自分たちが訛ってんのに気づかないのと同じで。俺も個人的にわかったけど、自分で気持ちいいなと思うテンポは常に走ってるの。『坂さん最高、今のバッチリだった!』って言う時は坂さん必ず走ってる」
上原子「シミもそうだよね。いつもは前に出てアグレッシヴに煽ってるけど、今回は一段上がって、バンマス的な感じでやってて。今までと違うぶん、気づいたこといっぱいあるって言ってた」
増子「だから一番大変だったのはリズム隊の二人かもね。まずプレイヤーとしてのスキルが求められるし、そもそもプレイヤーとしてのスキル云々じゃないところでここまで来た二人だから(笑)」
——確かに、音より先にキャラ出てますもんね。「プレイヤーとしてのスキル」とか、私も原稿で書いた記憶がない(笑)。
増子「だってそんな二人だもん(笑)。そういう二人が、誰でも乗っかれるプレイを心がけるとか、シンプルなリズムをストイックに続けるとか、そういうことを求められて、やらざるを得なくて。ほんと大変だったと思う」
上原子「熱くなりたい時に熱くなれない、前に行きたいけど行けない、みたいな。そのもどかしさは、最初あったんじゃないかなぁ」
――純粋に楽しめなかった部分もあるってことですか? 二人にとってはストレスが多かったとか。
上原子「や、でも後半はね、シミもどんどん満足気な顔になっていて。知らなかった世界を知れた、みたいな。すごい喜んでたよね。これを経てまた4人になったら絶対変わるだろうし。今後のシミと坂さん、楽しみだなぁ」
――ほう。増子さんがMCで言ってた「今回はお笑いじゃなくて音楽やってる」っていうのは、あながち冗談じゃないんですね。
増子「ほんっと音楽やってる感じだった。力技で持ってく部分が極端に少ないじゃん。歌も含めて、バンドの演奏に確固たる底力がないと納得させられないんだよね。俺、2回目の東京終わったあとスガ(シカオ)くんに電話したの。前にNHKホール見に行って、やっぱすげぇなと思ったからさ。ホール全体を掌握してて、自分のペースで肩の力を抜きながら持っていく。そこでスガくん言ってたのが『熱くなりすぎず、かといってクールになりすぎず、っていうことがホールをやる時に大事だ』って。楽曲を再現するのに終始するだけでもダメだし、熱い方向にばっかり持っていくのも、これまたホールでやることではない」
――あぁ、ロックだからってド根性で熱く頑張れば何とかなるものではないと。
増子「そう。だって届きづらいのね、熱が。で、反省するなら熱さじゃなくて、今日はクレバーにやりすぎたなとか、そっちになるってスガくんは言ってた。そのバランスの中でうまくやっていくコツっていうか」
――じっくり聴かせてからジャズセッションをバックにMC、そこから『ドンマイ・ビート』に至る中盤の流れとか、あれもホールならでは。
増子「そうそう。MCで“はい、どーも!”って切り替えるんじゃなくて。徐々に、照明とサウンドの雰囲気を変えていくっていう」
――ちなみに、ドンマイなエピソードを紹介するMCは毎回違ったんですか。
増子「うん。札幌ではね、友康の親父さんが初めて見に来てさ」
上原子「俺がギター弾いてるのを初めて見に来た。で、終わって『どうだった父さん?』って聞いたら『長いなぁ~』って。『長いの? 内容は?』『ほお~……』とか。そこは触れてくれないんだけど(笑)」
増子「でも友康が前に出てくるたんびに立ち上がってたらしいよ。可愛いなぁーと思って。でもウチの親もね、何が良かったってデュエットが良かったらしい(笑)。そこなの? っていう」
——ようこ姐さんとやった『トーキョー・ロンリー・サムライマン』ですか。あれ東京でもシビれるくらいカッコよかった。
上原子「や、札幌ではようこさん来れないから、(コヤマ)シュウくんとやったんだよね。白いスーツのシュウくん」
増子「ウチの両親あれが気に入ってさぁ。なにしろ『白いスーツの人良かったねぇ』ばっかり。次の日起きても言ってたもん。『いやぁ、昨日のあの白いスーツの人、あの人は真面目だねぇ』」
上原子「真面目?」
増子「『普通はね、人のライヴに呼ばれて札幌来ても手ぇ抜くもんだよ?』つって。抜かないっつうの(笑)。なんだと思ってんだよ(笑)」
――ははは。お互いいいネタ持ってるなぁ。で、盛り上がった後にはまた聴かせる曲が続きましたね。秋の歌は特に良かった。
増子「『枯レ葉~』ね、アコギ入るといいんだよね。もう昭和歌謡全開で。俺ね、『枯レ葉〜』は中田くんが歌ったのを一回聴いてみたい。椿屋(四重奏)の中田くん。絶対合うと思うんだよね。それも今回の編成で聴いてみたい。ゲストボーカル呼べるなら一回やってみたいなぁ」
――いったい誰のライヴなんだっていう話ですけど、そのぐらい、楽曲が自分たちのモノじゃなくなる、自分たちの手を離れていく感覚もあるんですか。
上原子「あるある。一回曲が離れて、みんなの手でゴロゴロ料理されて戻ってくる面白さみたいな」
増子「そのバランス取るのが、俺は一番神経使ったな。楽曲が活きるように、熱すぎずクールすぎずメロディを歌う。メロディも今まで以上に気を使った。ライヴハウスだと音程外そうがなんだろうが、熱をぶつける、ってことが大命題じゃない。でもホールはそれだと逆に届かないんだよなぁ」
——はぁー、そういうもんなんだ。っていうか私、普段ライヴハウスのバンドばっかり取材してるから、ホールのノウハウを語ってもらうの初めてかも。今まで気にしたこともなかった(笑)。
増子「そうだよね(笑)。言ったらさ、人のライヴ見に行っても、まぁまぁ、そんなにすごい曲じゃないかもしれない、よくある感じのステレオタイプな曲かもしれないって思っても、バンドの熱量さえ高かったら“うぉっ!”って感動するじゃない。それは距離感なんだよね。人間的な熱さにフォローされるというか、熱さが曲を凌駕してる。でも楽曲がすでに高いクオリティで完成されていれば、それだけで勝負できるのがホールで。結局は楽曲ありき。音楽だけで勝負するのって、ライヴハウスでやってるバンドにとって逆にチャレンジだよね」
――シビアな言い方をすれば、いくら凄いと言われるライヴバンドでも、ホールでできるバンドとできないバンドがいる。その差がはっきりわかってしまうわけですね。
増子「それはすごくあると思う。楽曲のバリエーションも重要だし。ちゃんと座って聴いて、いい曲だなぁと思えるバンドじゃないと。ライヴハウスだとまず酒飲むし、会場入っただけでテンション上がるでしょ。でもホールって音を聴きに来るところだから」
――……我々、音楽業界にいると言いながら普段は何やってんだろうって気分になってきました。
増子&上原子「ははははははははは!」
増子「普段はもう肉体労働だよ! 熱くてナンボだから」
――後半はようやく、ライヴハウスでも通用するようなアッパーな曲で盛り上げていくんですが、女性コーラスの独唱から始まる『労働CALLING』は凄まじかった。あと余談としては、東京では増子さんが『全人類肯定曲』の歌い出しを思いっきり間違えてましたね。
増子「ガチで間違えた!二回も間違えた! そのあと自分で書いた歌詞に身につまされたねぇ。間違ってもOK、って自分で言い訳してるみたいな(笑)」
上原子「でも増子ちゃん普段は曲順間違えないから。坂さんは間違えるけど」
――珍しいですね。それだけ緊張してた?
増子「なんだろう? 視覚では『全人類~』だと認識してるの。でも頭の中で鳴ってるのは『〜ファイターズ』だったんだよね。頭の中に叩きこまれてたの。ずっと近年は『〜ファイターズ』ばっかりやってたから」
上原子「久々だったからね、『全人類~』は。このぐらいのテンポの曲って、4人でやると正直怖いとこもあるんだよね。勢いだけで行けないから、4人でやると遅く感じるっていうか。でもこの編成だと速くする必要がなくて、大きく、楽しく聴かせられた」
――そしてラストまで大団円。気持ち良かったし、全員がほんと楽しそうでしたね。特に友康さんとタロウくんの笑顔がもう!
上原子「ははは。もうこのへんは全員参加。別にキーボードいらないんだけど、じゃあ奥野くんはシェイカー振ってて、みたいな」
増子「ツアー後半はさ、奥野も『オトナノススメ』から出てきて、することないのに友康の横で踊りだしちゃって(笑)。肩車しようとして転んでたからね」
上原子「早く出てきたはいいけど、だんだん間が持たなくなってきて、奥野くん(笑)。俺の隣でなんとなくノッちゃってんの(笑)」
増子「でもそういうのも楽しかったよね。うん、またやりたいなぁ」
——次もホールが決まってますよね。1月15日の中野サンプラザ。これは4人編成のライヴに戻るわけですが、JOE-NETSとのツアーを経た成果はどんなところに出るんでしょう。
増子「確実にあると思う。今作ってる新曲もなんか違うもんね。ベースとドラムの絡みにしても、楽曲全体の作り方にしても。やっぱひとつ確実にスキルが上がったと思う。一番デカいのは、坂さんがシミを意識して、ベースというものを意識してライヴをやれるようになったこと。これ相当デカいと思う。マジで変わると思う」
――………27年目にして、初めてベースの存在を意識するドラマー!
増子「そう(笑)。そんなこと考えないままやってきて、それが俺らん中では普通だったから。びっくりするよね」
上原子「あと、ウチらってライヴに関しては汗かかないと満足しないところがあって。でも違う楽しみと言うか、音楽的な喜び? 音楽を鳴らすことの楽しさを初めてわかったというか……これも27年目にして(笑)」
――ははは。すげぇ。どんな初歩的なことも、続けてみなきゃ実感できないっていう教訓みたいな話ですね。
増子「ほんと一生勉強だよ!」
上原子「今まではね、レコーディングはレコーディングの楽しみ、ライヴはライヴの楽しみ、って分けてたけど。これはどっちも楽しめるんだなっていうのがわかってきたし。今後はライヴの楽しみ方が変わってくると思うな」
増子「二つの味を分けるんじゃなくてね、一粒で二度美味しいっていいよね。そういうのが一番でしょう」

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